糞線虫症はどんな病気?

糞線虫症とは、線虫の一種である糞線虫に感染する感染症の一種です。
主に線虫に汚染された土に皮膚が直接触れることで発症します。
土の上を裸足で歩き感染するケースが最も多いとされています。症状は無症状であることも多いですが、発疹、せき、喘鳴、腹痛、下痢、体重減少などが現れる場合もあります。
合併症としては細菌感染を起こす場合があります。

発症がよく見られるのが、他の疾患の治療で用いる薬剤のえいきょうなどで免疫機能が低下している人です。
このような場合には下痢や腹痛の症状も頻繁に現れます。

糞線虫は小腸にすみつくことが多く、産卵し幼虫が放出されるとそのほとんどは便とともに排出され、土の中で数日を過ごすと感染力を持った状態に変化します。
糞線虫の幼虫は皮膚を破って侵入し、小腸に住み着くという流れを繰り返しています。また小腸に寄生している幼虫は同じ人に再感染するケースもあります。

糞線虫症の治療はほとんどの場合薬物療法が選択されます。

糞線虫症の主な症状は?

糞線虫症を発症した場合でも、症状が全く現れないケースがほとんどです。
しかし免疫機能が何らかの原因で低下している場合には、症状が現れる場合もあります。
特に皮膚、肺、消化管に関わることが多く、発疹、せき、喘鳴、腹痛、下痢、体重減少などが典型的な症状と言えます。
発疹は肛門の周囲にしばしば見られ、幼虫が皮膚の中を移動している際に伴って現れます。
幼虫の移動に合わせて、肛門周囲から太もも、殿部にも急速に広がります。発疹には強いかゆみを伴います。

糞線虫症は細菌感染症を合併するケースがあり、それは肺や消化管でよく見られます。
せきや喘鳴、腹痛などはこのような感染症によるものです。重症になると食欲が減退するようになり、徐々に体重が減少していきます。
栄養を正常に吸収できなくなるためです。免疫機能が低下している状態で重度の感染症を合併した受胎を過剰感染症候群と呼びます。
髄膜炎、敗血症、腹膜炎、肝炎などさまざまな疾患を引き起こし、命に関わるケースうもあります。

糞線虫症の主な原因は?

糞線虫症を発症する原因は糞線虫と呼ばれる寄生虫です。
糞線虫は土壌の中にひそんでおり、特に熱帯・亜熱帯地域でよく見られる特徴があります。
汚染された土を裸足で歩くなど、糞線虫に直接皮膚が触れると糞線虫は皮膚を破って通過し、体内に入り込みます。体内に入り込んだ糞線虫は血流に乗って肺、気管を通り消化管へ到達します。糞線虫は特に小腸に住み着く傾向があり、小腸で成虫になり産卵します。
消化管の中で孵化することもあれば、卵の状態で便とともに排出され環境中で孵化するケースもあります。
この際に体内で孵化した糞線虫は、消化管壁に入り込んだりして再び寄生することが多いですが、これは再寄生と呼ばれます。
人の体内で再寄生が繰り返されて、糞線虫のライフサイクルが確立してしまった状態を自家感染と呼びます。
直接臓器に侵入したり、血液の流れに乗って全身の臓器に運ばれることで臓器に何らかの影響を及ぼすことが多いです。

特にステロイドを使用した治療を行っている人やHTLV-1ウィルス感染、白血病、リンパ腫、移植後の状態である場合、症状が重篤するケースが多いとされています。

糞線虫症の主な検査と診断方法は?

糞線虫症は問診の他、糞便や血液などの検査によって診断されます。
発症している場合、糞線虫症を糞便を顕微鏡で観察すると成虫を確認できます。
便を培地に起き、糞線虫が動く様子を確認する場合もあります。血液検査は主に抗体検査のために行われます。
抗体は寄生虫などによる攻撃から体を守る働きをするタンパクを指します。
また小腸に内視鏡を挿入し、小腸組織の一部を採取する場合もあります。便から成虫が見つかった場合、他の部位でも検査を行う必要があります。

また、問診では糞線虫に触れるような機会があったかや、現在治療中の疾患の有無、ステロイド薬の使用の有無についても確認します。

過剰感染症候群の場合にはたんの検査、胸部X線検査なども行われます。たんのサンプルを検査し、幼虫の有無を確認し、さらに胸部X線検査では肺への感染の有無を確認します。

上記にようなの検査のデメリットとしては、検査で新しい感染と古い感染を区別できない点と、糞線虫と他の線虫の感染が判別できない場合がある点が挙げられます。

糞線虫症の主な治療方法は?

糞線虫症は、主にイベルメクチンやアルベンダゾールなどの薬剤を用いて行う治療が一般的です。
二つを比較するとイベルメクチンはより感染症が治癒する確率が高いとされています。
ただロア糸状虫症の人に使用すると脳の炎症を生じるリスクがあるため、治療を開始する前に事前に検査が行われます。
これらの薬剤は、薬を飲むことができない患者に対しても坐薬や皮下投与製剤などの種類で使用が可能です。

また過剰感染症候群の状態にある場合は2週間以上幼虫が排泄されない状態になるまでイベルメクチンを継続して投与します。
免疫力が低下している場合には、治療期間も長くなる傾向があります。合併症として起こってる細菌感染症に対しては原因となる菌に合った抗菌薬が用いられます。

薬剤を使用しながら、便の検査、血液検査を定期的に行ってその効果を確認します。
糞線虫の幼虫が治療後も便から発見されたり抗体の濃度が低下しない場合には、継続して治療が行われます。

糞線虫症の初診に適した診療科目