中耳奇形 チュウジキケイ

初診に適した診療科目

中耳奇形はどんな病気?

中耳奇形とは、中耳の中の耳小骨と呼ばれる小さな骨に生まれつきの変形や離断がある疾患を指しており、先天性耳小骨奇形とも呼ばれます。
鼓膜の中耳腔と呼ばれる部分には音を伝えるために不可欠な耳小骨と呼ばれる3つの骨があり、それぞれにツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と呼ばれています。これらの耳小骨に生まれつき奇形があると、骨がうまく連鎖せず音が神経へ伝わりにくくなります。例えば骨の一部分が欠けていたり、周囲の骨と固着しているケースなどが挙げられます。鼓膜と耳小骨には入ってきた音を大きくして内耳に伝える役割がありますが、耳小骨がうまく働かないことによって音の聞こえが悪くなる症状も現れます。奇形は片耳に生じる場合もあれば、両耳に生じている場合もあり、特に両耳の場合には生活に大きな支障が出ます。

治療は手術によって聴力の回復を目指す方法が一般的です。固着していた骨を離断するケースなどでは聴力回復が期待できることも多いです。

主な症状

中耳奇形の典型的な症状として、音の伝わりが悪く難聴になるケースが挙げられます。
鼓膜にはほとんどの場合異常は見られません。耳がある側頭骨の中には骨の中に外耳道、中耳、内耳があり、それぞれ生まれつき発達がみられないものがあり、中耳奇形以外にも内耳奇形、先天性外耳道閉鎖症などが挙げられます。

外耳道と呼ばれる通り道が閉塞している鎖耳、あごや顔面の奇形を伴うものを複合奇形なども中耳奇形に含まれます。
奇形が片側のにみ生じている場合、耳の難聴も片側に限られるため発見が遅れるケースもあります。両側性の場合、先天性難聴の明確な症状が現れるため、3歳ごろには発見、診断されるケースが多いです。

また難聴の症状に伴って言語発達障害が現れるケースも多いです。言葉を聞いてそれを真似ることによって言語は発達していきます。
聴力が低下していることにより、言語発達が遅れる場合があります。
言葉の発達は3歳ごろまでに完成するケースが多いため、成長の早い時期に治療を開始することも重要と考えられています。

主な原因

中耳奇形を発症する原因には胎児期における耳小骨の発生異常によるものが多いと考えられています。
遺伝的な要因、胎生時期の母親の感染症、環境を原因とするものや、明確が原因が明らかでないケースもあります。

遺伝的な要因としては、トリーチャー・コリンズ症候群やクルーゾン病などの先天性の疾患を発症している例が挙げられます。
これらの疾患は耳小骨に限らず体中のさまざまな場所の骨に発育不全が現れるもので、発症には遺伝的な要因が関与しているとされています。

胎児期の母親の感染症が原因として挙げられるのが先天性風疹症候群や先天性梅毒などです。
これは内耳障害、耳小骨の発育不全を引き起こす可能性があります。

中耳奇形はこれらのようにその他の疾患と関連している場合も多く、先天性外耳道閉鎖症や狭窄症などの外耳奇形を合併するケースも多いとされています。
耳小骨が連鎖している部分が離断と固着などが症状として挙げられていますが、複数の奇形が合併する複合奇形などもあります。

主な検査と診断

中耳奇形の診断には問診、視診、側頭骨CT検査、純音聴力検査などが行われます。
耳が聞こえにくいなどの自覚症状があったり、子供の様子から難聴が疑われる場合にはまず視診によって鼓膜を確認し、穿孔や陥凹などの異常所見の有無を確認します。
中耳奇形が疑われる場合には側頭骨CT検査を行うことで耳小骨連鎖の離断を確認でき、診断がくだされます。
耳小骨の形態、外耳道や内耳などの解剖学的な変化なども確認できます。

純音聴力検査では伝音難聴などの確認に役立ちます。
高音域に比較して低音域の気骨導差が大きいという場合にはツチ・キヌタ関節やアブミ骨底板が固着しているケースが多いとされています。
手術前の病態を確認するためにも有効な検査です。特にアブミ骨の固着については側頭骨CT検査では判断できません。

聴力障害は、出生後早期に行われる聴力検査によって発見されるケースも多いです。聴性脳幹反応、聴性定常反応検査などが行われます。

主な治療方法

中耳奇形の根本的な治療方法としては手術が行われます。骨に固着がみられる場合、可動術やあぶみ骨手術が行われます。
実施時期は両側性か片側性かによっても異なり、両側性の場合は小学校入学前、片側性の場合は20歳頃までに行われるケースが多いです。
また片側性で、特に生活に大きな影響がない場合には手術ではなく経過観察となることもあり、本人の希望によるところも大きいです。
生活環境や発育環境を踏まえて手術の時期を決定することも重要です。

一般的に聴力回復の経過がよいものには固着した美焼骨の離断などが挙げられます。奇形の種類によって術後成績も変動します。聴力回復が困難なケースとしては内耳窓付近の奇形を合併しているケースが挙げられます。具体的には内耳窓の入り口に顔面神経が走行異常を来している例が挙げられます。

耳の聞こえをサポートを目的に補聴器の使用も検討されます。早期に聞こえをサポートすることで言語発達障害などの影響を減らすことにもつながります。