眼鏡やコンタクトレンズから解放されるための視力回復手術、レーシックとICLの違いについてご存じでしょうか。レーシックは角膜を専用のレーザーで削り、屈折率を調整することで視力回復を図る治療法です。
一方、ICLは角膜と水晶体の間にレンズを挿し込んで視力を回復する治療法です。どちらも近視や乱視などの屈折異常を矯正する治療法ですが、手術の方法や効果の持続性、術後の見え方などに違いがあります。
この記事では、ICLとレーシックのそれぞれの手術について、治療法・費用・リスク・見え方などを比較して解説します。
ICLとレーシックは手術方法が異なる

ICLとレーシックはどちらも視力を改善するための手術ですが、その手術方法は大きく異なります。ここでは、それぞれの手術の特徴を解説します。
ICLは眼の中にレンズを入れる手術
ICL手術は、眼内に特殊なレンズを挿入することで近視などの屈折異常を矯正する方法です。角膜に手を加えることなく、裸眼での視力回復を目指します。
一般的に、手術時間は約10分と短く、患者さんはすぐに日常生活に戻れるケースが多いです。手術では、レンズを瞳孔の後ろ、すなわち虹彩の前に配置し、これが光の屈折を適切に調整することで視力を改善します。
レーシックは角膜をレーザーで削る手術
レーシック手術は、特殊なレーザー技術を用いて角膜の形状を調整し、視力を改善する方法です。角膜の表層部分を削り、光の屈折率を最適化して、近視やその他の視力問題を矯正します。
レーシックの大きなメリットは、手術時間が短いことです。経過観察は必要ですが、多くの場合はわずか5分程度で完了するため、その日のうちに日常生活に戻れます。
ICLとレーシックの費用の違い

視力回復手術を検討する際、費用は重要な要素の1つです。ICLとレーシックはどちらも人気のある手術ですが、費用には大きな違いがあります。
ここでは、それぞれの手術にかかる費用の相場と、その理由について詳しく見ていきましょう。
【ICL】両眼治療で40~80万円が相場
ICL手術は、オーダーメイドのレンズを使用するため、個々の近視度数やサイズに対応可能です。しかし、その分費用が高くなる傾向にあり、相場は45~70万円以上とされています。
ICL手術は、公的医療保険の適用外であるため自由診療となり、全額自己負担ですが、確定申告を行えば医療費控除の対象となり、一部の費用を控除することができます。
この手術は一度行えば半永久的に視力を維持できるため、長期的に見ると、コンタクトレンズの継続的な購入費用に比べてコストを抑えられます。
【レーシック】両眼治療で20〜40万円が相場
レーシック手術は、両眼での手術費用の相場はおよそ20~40万円と、ICLに比べて費用面でメリットがあります。
レーシックは症例数が多く、比較的安い価格で行うクリニックも存在します。また、費用には、手術後の定期検診や必要なアフターケアが含まれているケースが多いです。
レーシックは自由診療であるため公的医療保険の適用外となり、費用は全額患者さんの負担となります。確定申告時に医療費控除の対象となる可能性があることも覚えておきましょう。
ICLとレーシックを受けられない人は?

ICLとレーシックを受けられない人はいるのでしょうか。まずは、それぞれの違いを理解することが大切です。
ここでは、ICLとレーシックがどのような人に適しているのか、またどのような人が手術を受けられないのかについて詳しく説明します。
【ICL】強度近視の人でも治療を受けられる
ICL手術は、強度近視の治療にも有効です。レーシック手術と異なり角膜を削る必要なく、近視度数が-6Dを超えるような強度近視の方に適しています。
さらに、角膜の厚さに制限がある方や、すでにレーシック手術や白内障手術を受けた方にもICL手術は可能です。手術では角膜を約3mm切開し、眼球内に特別なレンズを挿入することで視力を改善します。
【レーシック】弱度~中等度近視までの人しか受けられない
レーシック手術は、近視・遠視・乱視の方に対して広く行われていますが、適応範囲には制限があります。日本眼科学会のガイドラインによると、レーシックで扱えるのは主に弱度から中等度の近視です。
具体的には、-3.00D以上から-6.00D未満の近視が一般的な適応範囲とされています。一方で、-6.00D以上の近視の場合は、レーシック手術の適応に慎重な判断が必要とされ、-10.00D以上の強度近視に対してはレーシック手術は適応外、または禁止されています。
高度な近視を有する方は、レーシック手術ではなく他の治療法を検討しましょう。角膜を削るレーシック手術の性質上、特に高度な近視の場合は、適切な治療の選択が重要です。
ICLとレーシックには年齢制限がある
ICLとレーシックは、どちらも一定の年齢制限があります。手術の安全性と効果を最大化するためです。
ここでは、ICLとレーシックのそれぞれの手術における適応年齢と、その理由について解説します。
【ICL】適応年齢は25~40歳
ICL手術は、25~40歳くらいまでの方が適応年齢とされています。18歳未満は未成年で、眼の成長が終わっていません。近視の進行が一定して止まる22〜23歳頃から、ICL手術を受けることが一般的に推奨されます。
さらに、40歳を超えると、老眼や白内障などの加齢に伴う症状が出始める可能性が高くなります。ガイドライン上にはICL手術の年齢の上限はないものの、「加齢による水晶体の変化を十分に考慮する必要がある」と注意を促していることから、40歳までを適応年齢としています。
病院によって推奨している年齢に多少の違いがあるため、ICL手術を検討する際には事前に確認しましょう。
【レーシック】適応年齢は18~65歳
レーシック手術は、18~65歳までの方が一般的な適応年齢とされています。未成年では眼球の成長が完了しておらず視力が安定していないため、18歳未満の成長期にある方はレーシック手術を受けられません。
また、60〜65歳を上限とする理由は、加齢に伴う老眼や白内障などが挙げられます。老眼や白内障は、レーシック手術の非推奨とされる状態です。
レーシック手術では角膜をレーザーで削るため、術前の検査で角膜の状態を十分に評価することが重要です。一度削った角膜は元に戻せないため、手術適応には特に慎重な判断が必要とされます。
ICLとレーシックのリスクを比較!

視力回復手術を受ける際には、それぞれの手術方法に伴うリスクを理解しておくことが重要です。ICLとレーシックは異なる手術方法であるため、リスクの種類も異なります。
ここでは、それぞれの手術における主なリスクについて説明します。
【ICL】白内障のリスク
ICL手術は、水晶体とレンズが接触しないように施術されるため、白内障のリスクは比較的低いとされています。しかし、施術中の水晶体への接触は、白内障のリスクを増加させる可能性があるため注意が必要です。
このリスクは、施術者の技術や経験に依存する部分も大きく、一般的には低い割合で発生します。また、虹彩に穴を開ける切開手術を行うことで、眼内圧の問題を軽減し、角膜内皮細胞数の減少を防ぐ工夫がされています。
【レーシック】合併症のリスク
レーシック手術では、角膜をレーザーで削ることで視力を矯正します。角膜異常による術後の発症率は比較的低いとされていますが、可能性はゼロではありません。合併症のリスクは常に考慮する必要があるといえます。
レーシック後に発生することがある合併症には、ケラトエクタジア(角膜変形)や視力低下、ハロー・グレアなどがあります。レーシックは角膜を削ることから、手術後に元の状態に戻すことはできません。
そのため、手術前の適応検査は非常に重要であり、角膜の厚さや健康状態の詳細な評価が必要です。極めてまれなケースでは、重大な合併症が発生した場合、角膜移植が必要になることもあります。
ICLとレーシックは老眼への影響が違う

ICLとレーシックには、それぞれの手術方法に特性があり、老眼への影響も異なります。詳しく見ていきましょう。
【ICL】近くを見るときに老眼鏡が必要になる可能性がある
ICL手術は遠くを見えるようにすることが可能ですが、水晶体を残すため、老眼治療には直接対応できません。
したがって、術後も近くの物を見る際には、老眼鏡の使用が必要になる場合があります。老眼は加齢によって生じる自然な変化であり、ICL手術ではこれを解決できません。
老眼対策として、一部の患者さんではコンタクトレンズや老眼鏡の併用を選択することになります。ICL手術を検討する際には、老眼の可能性も考慮し、適切な予防策や対策を検討しましょう。
【レーシック】老眼に影響しない
老眼は、年齢と共にピントの調整機能が衰える生理現象で、主に水晶体と毛様体の働きに関連しています。
レーシック手術では、屈折率を調整して視力を矯正するため、老眼の進行には直接影響しないと言われています。
ICLとレーシックは「見え方」が違う

ICLとレーシックでは見え方にも違いがあります。ここでは、それぞれの特性を解説します。
【ICL】レンズで矯正するのでクリアな視界になる
ICL手術は、視力の安定性が高く、一度回復した視力が長期間安定する傾向にあります。
また、ICLは角膜の歪みを生じさせないため、視界のクリアさとコントラストの精度が高いことが特徴です。このように、コンタクトレンズを用いた視力矯正は、見え方の質において非常に高い効果を示します。
【レーシック】ドライアイやハロー・グレア現象の可能性がある
レーシック手術では、角膜の神経も一部切断されるため、術後にドライアイが起こることがあります。
通常、ドライアイは一時的で、多くは1ヶ月程度の点眼治療によって改善します。また、レーシック手術後には、ハロー・グレア現象が発生することがあります。
これは、夜間に光がにじんだりぼやけたりする現象で、周囲の光をまぶしく感じることもあります。角膜のフラップ形成や角膜の形状変化、ズレ、網膜の屈折異常に関連している可能性が高く、これらの症状は時間が経つにつれて軽減し、見え方は徐々に安定していきます。
ICLもレーシックも受けるときは眼科選びを慎重に!チェックポイント3つ

ICL手術ではICL認定医が在籍している眼科、レーシック手術では日本眼科学会のライセンスを持つ執刀医がいるか確認しましょう。
また、実績のほか、医師やスタッフが患者さんに寄り添い、真摯にカウンセリングを行っているかどうかも重要な要素となります。
眼科選びの際のチェックポイントを詳しく紹介します。
①通いやすい場所にある
ICLやレーシックを受ける際は、基本的に術後の通院が必要になります。術後の検診やアフターケアのため、1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月といった定期的に訪問する必要があります。
このため、自宅や職場からのアクセスが良い、駅近で通いやすい眼科を選びましょう。また、万が一の緊急事態に迅速に対応できるよう、近隣にある眼科を選ぶのもおすすめです。
②リスクやデメリットを説明してくれる先生がいる
ICLやレーシックを選択する際は、メリットとデメリット、そしてそれに伴うリスクを正確に理解することが重要です。手術のリスクやデメリットを具体的に説明してくれる医師がいる眼科を選びましょう。
手術には必ずマイナス面が伴うため、これらを完全に理解し、自分にとって適した治療法を選択するためには、医師からの正しい情報提供が不可欠です。
③アフターケアが充実している
ICLやレーシック手術後のアフターケアは、手術の成功にとって非常に大切です。手術後の適切な経過観察や、万が一の問題発生時の迅速な対応は、全体の治療結果に大きく影響します。
手術後も定期的な検診や目薬の処方など、しっかりとしたフォローアップ体制が整っている眼科を選びましょう。また、再手術や追加矯正が必要となった場合の対応も重要です。
例えば、再照射や追加の矯正が必要になる場合がありますが、これらが無料または安い費用で行えるかどうかも確認しましょう。
ICLとレーシックに関するよくある質問
ICLとレーシックのどちらの方がいい?
レーシックとICLのどちらがいいかは、個々の視力状況や希望によります。ICLは適応範囲が広く、レーシックでは適用できない強度の乱視・近視もカバーできます。また、角膜の厚さが足りずにレーシックが適用外となった場合もICLが適用可能です。
一方、レーシックは手術時間が短く、費用もICLより低い傾向があります。
ICLとレーシックで安全性が高い方は?
ICLとレーシックの両方とも米国FDAの認可を得ており、安全な治療法とされています。しかし、ICLはレーシックと異なり、角膜を削りません。これにより、レーシックに比べて安全性は高いとされています。
ICLとレーシックで手術時間が短い方は?
手術時間については、レーシックの方がICLよりも短いです。レーシックの手術時間は10分程度で、ICLの手術時間は15〜20分程度です。
ICLとレーシックで痛みが少ないのは?
ICLとレーシックの手術は、どちらも点眼麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。手術後の痛みについては、個々の体質や感じ方によるため、一概にどちらが痛みが少ないとはいえません。
どちらの手術も、適切なケアとフォローアップにより、不快感や痛みは最小限に抑えられます。
手術後に近視が元に戻ることはある?
ICLの効果は半永久的で、一度手術を受ければ視力は基本的に一生持続します。一方、レーシックの場合は、手術後数年で近視が戻る可能性があります。
乱視でも受けられる?
乱視の場合でも、ICLとレーシックの両方とも手術を受けることが可能です。ただし、レーシックは6.00Dまでという制限があり、ICLはレーシックでは適用できない強度の乱視もカバーできます。
乱視の矯正については、専門的な医師と相談しながら適した手術方法を選択することが重要です。
レーシック後にICLはできる?
レーシック手術後にICL手術を受けることは、原則として可能です。ただし、個々の眼の状態や手術後の経過によりますので、具体的な判断は専門的な医師との相談によります。
まとめ:ICLとレーシックは治療法・費用・リスクに違いあり。専門性の高い眼科医に相談の上、納得のいく判断を

ICLとレーシックは、それぞれ異なる特性とメリットを持つ視力回復手術です。ICLは視力回復の持続性や見え方の質に優れ、レーシックは手術時間が短く、費用が比較的安価となります。
どちらの手術を選択するかは、個々の視力状況、希望、費用などを考慮に入れ、専門医と相談することが重要です。また、手術のリスクや後遺症についても理解した上で検討しましょう。