今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け!今回は『クッシング症候群ってどんな病気?』をご紹介させて頂きます。

クッシング症候群とは

クッシング症候群とは、ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰な状態のことを指します。コルチゾールは分泌が多すぎるとさまざまな症状が出ますが、本来は炭水化物・脂肪などの代謝や、炎症を抑えたり免疫を調整したりする必要不可欠なホルモンです。ストレスホルモンの一つでもあるので、ストレスにより分泌が増加します。

脳内ではさまざまなホルモンの産生や分泌がされていますが、中でも副腎のコルチゾールが過剰に分泌されて特徴的な症状がでることをクッシング症候群といいます。クッシング症候群の中で、約70%を占めておりよく知られているのが、国の難病指定も受けているクッシング病です。他の病名でもそうですが、「□○症候群」という場合、症状が同じ一群を示しますが、原因は同じではありません。ちなみに、クッシング病は下垂体ACTH1産生腫瘍が原因で、このACTHが副腎皮質を刺激して、コルチゾ-ルの産生増加が起きる疾患です。

1)ACTH:adrenocorticotropic hormone (副腎皮質刺激ホルモン)

クッシング症候群の症状

クッシング症候群には主に以下のような症状があります。
・満月用顔貌(まんげつようがんぼう)…
顔が丸く膨らんだようになる

・中心性肥満 …
脂肪が偏ってつくようになり、体幹の中心部が肥満化するが 手足は細い

・野牛肩(やぎゅうかた) …
肩から背中にかけてバランスの偏った肉がつく

・赤い皮膚線条(ひふせんじょう) …
おなかなどの柔らかい部分に妊娠線のようなものが出る

・紫斑(しはん)ができやすい …
皮膚が薄くなり、青あざができやすい

・筋力、抵抗力の低下 …
感染症に弱くなったり、傷が治りにくくなったりする

・小児の発育遅延 …
肥満になるが身長は伸びない

・精神症状 …
不眠や、怒りっぽくなったり、うつ気味になったりする

・カリウム不足 …
体がだるくなり、よく足がつります。

・月経不順、多毛症などの男性化兆候 …
コルチゾールはアンドロゲン(男性ホルモン)と同じステロイド骨格をもっているため、男性ホルモンが増加したのと同じように、頭の脱毛や体毛が濃くなるなど、症状はさまざまです。

他にも高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症など生活習慣病に似た病気が合併症として出る場合があります。

クッシング症候群の原因

男女ともにかかりますが、1:4の割合で女性の患者が多いと言われています。小児の患者もいますが、遺伝する可能性は低い病気です。症状の項目にあるように、クッシング症候群に関しては見た目に症状が現れることが多いので患者さん自身も気づきやすいケースが多くなります。

先ほど、説明したクッシング病の原因は、脳の下垂体にできたACTHを産生する腺腫(せんしゅ=良性の腫瘍)が原因となり、副腎でコルチコステロイドを過剰に産み出していることです。なぜ腺腫ができるかについてはまだ解明されていません。

クッシング症候群と診断されたら

問診のあとにまず血液検査をおこないます。コルチゾールの上昇が認められるとクッシング症候群が疑われますが、ストレスや空腹によって値が変動しやすいため何度か検査が必要です。基本、早朝に採血をするため、入院が必要になる場合が多いです。

それでも疑わしい場合には、デキサメタゾン(合成ステロイドホルモン)を投与し、血中のコルチゾール値が変動するかを確認します。少量デキサメタゾンで低下していなければ、クッシング症候群を疑います。大量デキサメタゾンで抑制されれば、 Cushing病(下垂体ACTH産生腺腫)と診断します。大量のデキサメタゾンでも抑制がなければ、それ以外のクッシング症候群(副腎皮質腺腫、異所性ACTH症候群値など)を疑います。大切なのはこのホルモン異常の原因が何かを探ることです

下垂体腺腫を疑う場合、ガドリニウム造影MRI(強力な磁気で体内を投影する方法)が最も正確ですが,一部の微小腺腫はCT(X線を使った体の断面を撮影する方法)でも描出されます。検査結果から下垂体以外の原因が示唆される場合は,画像検査として肺,膵臓,副腎の高分解能CTや,放射性標識オクトレオチドによるシンチグラフィー(体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したもの)またはPETのほか,ときにフルオロデオキシグルコース(FDG)によるPET( 陽電子放出断層撮影)などを行います。

クッシング病の小児では下垂体腫瘍は極めて小さく,通常MRIでは検出できません。錐体静脈洞からの採血はこのような状況で特に有用ですが、専門医のいる医療機関出ないと行っていません。胎児の放射線被曝を避けるために,妊婦にはCTよりもMRIが望ましいとされています。

下垂体以外にACTH産生腫瘍が見つかれば、異所性ACTH症候群と言われますが、クッシング病には含まれません。あくまで、クッシング病は下垂体ACTH産生腫瘍です。

治療せずに放置すると症状はさらに悪化します。抵抗力が落ちていて感染症にもかかりやすくなりますので、重い肺炎や敗血症にかかり死に至るケースもあります。生命にも関わってくるので、きちんと診断され治療することが大切です。

クッシング症候群の治療法は

原因の多くは下垂体にできた腺腫なので、それを取り除くための手術をするのが最善とされています。現段階では薬剤で完全に消すことはできません。場合によっては放射線治療も行われます。

一度切除したら終わりではなく、再発した場合には再び手術を考慮します。手術で改善が見られない場合には、副腎に作用するコルチゾール産生を抑える薬剤を投与する場合もあります。

日常生活での注意点

高たんぱく食をとり、カリウムを投与してもらうなどが推奨されています。また、筋力低下により骨折しやすくなっているので転倒に注意が必要です。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症など合併している病気があれば併せて治療し、日常生活でも塩分やカロリー制限に気をつけます。なるべく早く病院を受診し治療を始めることが第一です。

この記事の監修医師

大植医院

院長 大植 鉄也 先生

住所:〒596-0812 大阪府岸和田市大町3-3-4

TEL:072-445-2662

診療科目:内科、小児科、禁煙外来、肥満外来(ダイエット外来)、トラベル外来(トラベルクリニック)、健康診断・予防接種

<参考>

大植医院公式ホームページ

大植鉄也先生のご紹介