今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け!今回は『不妊の原因にもなる「高プロラクチン血症」とは』をご紹介させて頂きます。

「母乳をつくる」重要なホルモン

「プロラクチン」は、脳の下垂体(さまざまなホルモンの働きをコントロールする部位)から分泌される成長ホルモンの一種で、「乳汁分泌ホルモン」とも呼ばれています。プロラクチンは、妊娠中は乳腺を発育させ、出産後は母乳をつくるための重要な働きを担う物質です。そのため、プロラクチンの値が高くなると、母乳の分泌がみられるのが特徴です。

一方で、授乳期には、プロラクチン値が高まることで、排卵が抑えられ、できるだけ妊娠を妨げる働きが起こります。これは、母体の回復を案じるとともに、ママが子育てに専念できる環境を整えるための自然な仕組みといえるでしょう。

排卵も、月経も、起こらなくなる

プロラクチンは、妊娠中と産後の授乳中に大量に分泌されるホルモンです。しかし、妊娠中でもないのに、プロラクチンが血液中に異常に増えるのが「高プロラクチン血症」と呼ばれる病気です。この症状は、プロラクチン値が、日常的に高い「顕在性」と、夜間や体調不良の際に高くなる「潜在性」に分類されます。

プロラクチン値が高くなることで、卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が抑制されます。卵胞は育たなくなり、排卵も月経も起こらない状況になることがあります。そして妊娠に関係なく、
(1)月経不順
(2)無月経
(3)乳房の腫大
(4)乳汁漏出(乳汁の分泌)
といった症状があらわれます。

「不妊症の原因」になる恐れも!

「高プロラクチン血症」にかかると、ホルモンバランスが崩れ、卵が育たない、育ってもうまく排卵できないなどの「排卵障がい」が起こりやすくなります。他にも、頭痛、吐き気、視界不良などの症状がみられることがあります。男性では、性欲低下や勃起障がいが起こる可能性があります。

高プロラクチン血症は、近年、20~30代の女性を中心に増える傾向があり、「不妊症」の原因につながる恐れがあるとして心配されています。性別にかぎらず、(1)睡眠時間が短い人
(2)夜勤が多い人
(3)生活習慣が乱れがちな人
(4)ストレスをためやすい人
に発症が認められる傾向が高いようです。

原因の多くは「脳にできた」良性腫瘍

高プロラクチン血症の原因は、現在のところ、いくつか挙げられています。もっとも多い原因として考えられるのは、頭部のMRI検査でも判明できないくらい「微小な腫瘍」が、脳下垂体に発生するケースです。この腫瘍は「プロラクチノーマ」と呼ばれる良性のもので、発生原因はいまのところ明らかになっていません。

他にも、「遺伝的体質」や「薬剤の副作用」が原因に挙げられています。特に薬剤については、抗うつ薬、吐き気止め、胃薬、抗アレルギー薬を長期間服用することで、「高プロラクチン血症」が引き起こされることがあります。

約2~6カ月の「薬物治療」で改善

生理不順が続くようなら「婦人科」を受診して、専門医に相談しましょう。男性の場合は(女性でももちろん)、「脳神経科」を訪ねるのがよいでしょう。

診断は、血液検査によって、プロラクチン値の状況を確認するのが一般的です。最初の検査でプロラクチン値が高いと、時期を変えて何回か再検査を実施することもあります。脳下垂体の腫瘍が疑われると、MRIなどの画像検査が行われるでしょう。

抗うつ薬や胃薬などが発症原因であることも考慮し、医師が現在服用中の薬を確認し、場合によっては服用の一時中止が求められます。

治療には、まず十分な睡眠など生活習慣の改善がすすめられます。そのうえで、プロラクチンの産生量を抑制する「薬物治療」を開始するのが一般的です。約2~6カ月の服用で、月経が回復し、やがて腫瘍が消える効果が期待できます。症状や原因によっては、「手術療法」や「放射線療法」が検討されることがあります。

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