今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『秋冬独特のうつ病「季節性情動障害」とは?』をご紹介させて頂きます。

10月〜3月までの「冬期うつ病」

春になると心がはずみ、秋になるともの悲しいなど、季節が変わると人の感情が揺れるのは以前からよく知られていることです。しかしこれが「病気」として認識されるようになったのは1984年からです。

アメリカのノーマン・ローゼンタール博士が、特定の季節に起こる気分の落ち込みを「Seasonal Affective Disorder(SAD)」と名づけて発表したのが始まりです。それ以降、日本では「季節性情動障害」と呼ばれています。

季節性情動障害は、秋から冬にかけて、きまって気分の落ち込みが見られる脳機能障害で、うつ病の一種です。10~11月頃に憂うつな気分(うつ症状)が始まり、翌年の2~3月頃まで続きます。そのため、「季節性うつ病」あるいは「冬季うつ病」とも呼ばれることがあります。
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普通のうつ病と、正反対の症状も出る

季節性情動障害の症状は、一般的なうつ病とおなじで、次のような変化に患者は悩まされます。

・気分が落ち込む
・毎日張り合いがない
・学校や会社に行きたくない
・すぐにイライラする
・罪悪感や不安感に襲われる
・物事を楽しめない
・人に会うのがつらい
・夜、眠れない(睡眠障害)
・集中力が大きく欠ける
・性慾が減退する

また、一般的なうつ病と異なる症状もあります。通常、うつ病にかかると、眠れなくなる・食欲が減退するのが特徴ですが、季節性情動障害では、睡眠時間が長くなり、過食ぎみで体重が増えることが多いようです。特に、甘いものなどの糖質が欲しくなり太りやすくなります。
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日本に約100万人、女性は特に注意して

季節性情動障害の発症年齢は広く、特定の年齢層はありません。男女比は「1:2」で女性にやや多く発症しています。夏が終わると「胸が締めつけられるような虚無感に襲われる」という女性は、注意が必要です。

日本では馴染みのない病気ですが、ヨーロッパではよく知られています。イギリスでは、国民の約8%が、季節性情動障害にかかっていると言われています。これは約500万人に相当する数字です。さらに、このうちの約200万人は深刻な状態であるとも報告されています。厚生労働省によると、日本での患者数は、現在約100万人と推計されています。
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「日照時間の不足」が原因?

季節性情動障害の「うつ状態」は、春になると回復するのが特徴です。そして、季節性情動障害患者の約30%は、春から夏にかけて「軽躁状態(気分が軽く高揚する状態)」になります。

そのことから、季節性情動障害の原因は「日照時間不足にある」と考えられています。ヨーロッパには、日照時間が少ない高緯度地域が多いため、患者数が多いのもうなずけます。

うつ病の原因は、脳内神経伝達物質の「セロトニン」という物質の不足と考えられています。そもそもセロトニンは、日光が眼を刺激することで、脳に信号が伝達されて作られる物質です。したがって、秋から冬にかけて日照時間が短い時期が続くと、セロトニンは不足し、うつ病になりやすいのです。
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人口光の日光浴で、効果がある

思いあたる症状があるときは、心療内科や精神科を受診しましょう。季節性情動障害の治療は、「光療法」がもっとも効果の高い治療といわれています。

光療法は、ライトボックス(自然光を模した人工光)を使って、1日1〜2時間、2500ルクス〜1万ルクスの光を浴びることで、セロトニンの量が増やします。これは、一般の室内照明の約10倍の強さです。紫外線はないので肌や目に害はありません。

治療した人の約85%に効果が認められ、早い人では、治療から2〜3日で効果があるといいます。抗うつ剤治療の考えられますが、第一選択は「光治療」であることを覚えておきましょう。
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いちばんの予防策は「朝の太陽光」を浴びること

季節性情動障害の予防には、毎朝、朝の太陽光を浴びることです。約10分の朝の日光浴朝は、2000ルクスの光によって、セロトニンの分泌が促されます。そして、セロトニンの材料である「トリプトファン」というアミノ酸を多く含む、豆腐・黄色野菜・バナナ・豆乳・牛乳を朝食で摂取することをおすすめします。

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