今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『牛乳は本当に体に良いの? がんとの関係は?』をご紹介させて頂きます。

「健康飲料」の代表格である「牛乳」について、その効果を疑う見解が出始めています。カルシウムは体に必要な栄養素で、牛乳はカルシウムを摂るのに適した飲み物であることは間違いありません。問題は「それ以外の弊害」なのです。詳しくみてみましょう。
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ほかの動物の母乳を飲む珍しい生き物?

人間以外の動物は、同じ種から分け与えられる母乳か水しか飲みません。人間だけが、牛乳という「ほかの動物の母乳」を飲んでいます。
人間が「ほかの動物の母乳」を飲む歴史は古く、紀元前9000年までさかのぼります。そのころはヤギやヒツジの乳を飲んでいました。牛乳が広く飲まれ始めたのは紀元前3000年ころといわれています。それは他の動物の乳に比べて牛乳は、カルシウム、ビタミン、脂質、タンパク質などが豊富だからです。もちろん当時は、牛乳の成分を知ることはできませんでしたが、「ほかの乳を飲み続けるより体に良い」と体感していたのでしょうね。
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塩分を獲りすぎている人にも

牛乳の効果は「カルシウム摂取による骨の強化」だけではありません。塩分を摂りすぎている人は、牛乳を飲むと体内のナトリウム=塩を減らすことができるのです。
また「牛乳からカルシウムを摂ることに意味がある」という見方もあります。それは牛乳に含まれる「カゼイン」というたんぱく質の働きです。カゼインはカルシウムと結びついて、体がカルシウムを吸収するときに手助けしてくれるのです。ですので、サプリメントでカルシウムを摂るより、牛乳を飲んだ方が良いのです。

脂質は良くないが…

牛乳には動物性脂肪が含まれています。そして生活習慣病のひとつに、脂質異常症があります。なので牛乳は良くない…と早合点しないでください。
牛乳には、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳があります。こうしたものを選ぶことで、脂質を増やさずに牛乳の恩恵を受けられるのです。
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アメリカでの議論

アメリカの農務省は、9歳以上の男女は、低脂肪牛乳を1日3杯飲むように提唱しています。しかし2013年に、栄養学の専門家が「低脂肪牛乳1日3杯で健康になる証拠はあるのか」と疑問を呈したのです。
ただその専門家は「牛乳を食卓から排除しろとはいわない」とことわっています。彼がいいたかったことは、「牛乳だけに頼った健康法はいかがなものか。それよりも、イワシ、ケール、豆からカルシウムを摂った方がいいのではないか」ということです。

日本でも「牛乳のみ」は「△」

日本の厚生労働省も「牛乳のみ」に頼ったカルシウム摂取は推奨していません。厚労省のオススメは、成人が1日当たり「牛乳130グラム、豆100グラム、緑黄色野菜120グラム」を摂取することです。
いずれにしても「牛乳=健康に良い」は揺るがないようです。
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がんと牛乳

牛乳も同様で、「牛乳は大腸がんのリスクを減らす」という研究結果と、「牛乳は前立腺がんと卵巣がんのリスクを高める」という研究結果が、両立しているのです。
乳がんに至っては「牛乳がリスクを減らす」と「牛乳がリスクを高める」という相反する報告が存在するのです。
「牛乳を飲んだから乳がんになった」ともいえますし、「牛乳を飲まなかったから乳がんになった」ともいえます。
一体どういうことなのでしょうか。

キーワードはホルモンだった

牛乳の中に含まれている「IGF-1」というホルモンがカギを握っていました。このホルモンは、細胞の成長を助けます。細胞は一定期間が過ぎると自然に死んでしまうのですが、このホルモンは細胞の死を抑制するのです。これは健康維持にとても大切なことです。

しかしこのホルモンは、がん細胞の「死」すら抑制してしまうのです。がん細胞は健康な人でも毎日生まれています。しかし健康な人はがん細胞をやっつけることができるので「病気としてのがん」の発生を抑えることができています。
ところがこのホルモンが活躍し過ぎてしまうと、がん細胞を勢いづかせてしまうのです。
いかがでしょうか、牛乳によって「IGF-1」ホルモンを摂取することは必要なのですが、摂り過ぎると悪い結果をもたらす、という理屈をご理解いただけましたでしょうか。

まとめ

それでは結論を紹介します。専門家は、一般的には成人であれば、1日2杯までの低脂肪牛乳が理想的としています。つまり2杯まではリスクよりメリットの方が大きく、3杯目以降からリスクが高くなるということです。

牛乳を飲むメリットとしては、骨粗鬆症予防になることです。つまり、がんを恐れて牛乳を飲むことを完全に拒絶すると、骨がもろくなって高齢になったときに骨折しやすくなり、ひいては寝たきり生活になる可能性があるのです。これでは「がんにならない」ことの意味が薄れてしまいますよね。
(参考:「日経トレンディネット」「タニタの健康応援ネット」)