今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『手術ロボット 「ダ・ヴィンチ」』をご紹介させて頂きます。

ロボット手術の時代。日本でも211台導入

ロボット手術の時代が、いよいよ本格的にやって来たようです。
執刀医は患者の体にまったく触れず、3Dモニター(立体画像)を見ながら、遠隔操作でロボット・アームを動かし手術を行う、という医療革新が臨床現場でおこっています。

ロボットの名前は「ダ・ヴィンチ(da Vinci)」、世界で年間約28万例の臨床実績があり、アメリカでは前立腺がんの手術の約98%がダ・ヴィンチを用いて行われているといいます。
日本でも、狭心症・心筋梗塞・心臓弁膜症・大動脈瘤などや前立腺がん・胃がんをはじめ、心臓外科・消化器外科・泌尿器科・呼吸器外科・産婦人科・頭頸部外科などダ・ヴィンチは年間1万2000以上にもおよぶ手術を成功させています。

ダ・ヴィンチは、米国インテュイティヴ・サージカル社が1999年に開発した手術用の医療ロボットです。一番安いモデルで、日本では1台2億4800万円といわれています。2015年12月において、世界では3597台、日本では2000年3月に慶應義塾大学病院にはじめて設置されてから、211台が導入されています。
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ロボット・アームは、米粒に文字が書けるほど繊細

ロボット手術といっても、無人の手術室で機械が手術を行うわけではありません。3つのアームを使って、執刀医は数メートル離れた場所から手術を行います。

執刀医が、サージョンコンソールというコックピットのような位置から3Dモニターに映しだされる拡大画像を見ながら、手元のハンドルを操作し、患者の腹部1~2cmの小さな創から手術器具を取り付けたロボット・アームと内視鏡カメラを挿入し、手術を行います。

①鉗子(かんし)以上にアームの可動域が広いこと、②3次元の拡大視野が得られること③手ぶれ防止機構が備わっていることが大きな特徴です。そして、座って比較的らくな姿勢で手術が行えるため、長時間にもおよぶ医師の肉体的負担を軽減することができます。

ロボット・アームの操作については、折り鶴を作ったり、米粒に文字を書いたり、ブドウの皮をむいたりができるほど、ダ・ヴィンチは細かな作業ができるようで、「人間の手ではできない作業をこなせるのが、ダ・ヴィンチの大きな魅力だ」ともいわれています。
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ロボット手術は、身体的・精神的な負担が軽い

患者には術後のメリットが大きいようです。ダ・ヴィンチによる手術は、一般の手術にくらべて患者の身体的・精神的な負担が軽いといいます。

傷口が小さいため、①出血量が少ない②術後の痛みが少ない、③術後合併症が少ないなどが報告されており、術後の体力回復が早い傾向にあります。手術の翌日にはICUから一般病棟に移れたという例もあります。早い時期からのリハビリテーションが開始でき、早期退院・早期社会復帰が期待できます。
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今後、保険適用が始まれば

ダ・ヴィンチによる手術は、いまのところ保健がきかないため、高額な医療費はデメリットといえるでしょう。しかし、すでにダ・ヴィンチによる前立腺がんや胃がんの手術が先進医療の承認を受けています。先進医療は、特定の高度な医療技術に対して、保険診療と自費診療の併用(混合診療)を認める制度です。

これにより、入院費などが公的医療保険の対象となり、これまで約250万円であった患者の自己負担額は「約70万円」と3分の1以下に大きく軽減されています。

近い将来、ロボット手術費の保険適用が、できるだけ速やかに検討されることを医療機関は期待しています。保険適用が始まれば、多くの症例がダ・ヴィンチへ移行すると考えられます。