今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『中足骨疲労骨折』をご紹介させて頂きます。

裸足ランニングの流行と「タラウマラ族」

2009年ごろから、アメリカで「裸足ランニング」が流行しています。きっかけは一冊の本でした。フリーランスの雑誌記者をしているクリストファー・マクドゥーガル氏が書いた「BORN TO RUN 走るために生まれた」が全米でベストセラーになったことです。

マクドゥーガル氏はランナーでもありました。

2004年、取材で訪れたメキシコで、コッパー・キャニオンという秘境に現代社会と隔絶して暮らす4万人ほどの「タラウマラ族」というインディオの存在を知ります。彼らは「走る民(ララムリ)」と呼ばれ、1日に100キロ以上の距離を「ワラーチ」という古タイヤをリサイクルしたサンダルで走っていました。

そしてあるとき、マクドゥーガル氏はランニング中に足を痛めてしまいます。そこで思ったのです。「私は100ドル以上もする高価なシューズを履いているのに足を痛めて、なぜタラウマラの人たちは粗末なワラーチを履いて走っても何ともないのだろう?」
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フォアフット着地が、人間本来の走り

高級シューズを履くランナーは、安価やシューズのランナーよりもケガをする確率が高いといいます。かかとにたっぷりと衝撃吸収材を入れたランニングシューズによって過剰に守られてきた私たちの足は、足本来の機能が退化しているからです。

裸足ランニングは、かかと着地(ヒールストライク)ではなく、前足部着地(フォアフット着地)で走ります。これが人間本来の走りのようです。

人間が本来持っているバネや、アキレス腱を上手に使って着地衝撃を軽減させ、膝蓋大腿関節にかかる負担は5~7割減少し、ケガを防ぐことができる、と専門医はいいます。裸足で走った結果、酸素消費量が2%減少したという報告もありました。

やがて、裸足で走る「ベアフットランニング」が流行しました。それにあわせて、裸足に近い状態を作る「裸足系ランニングシューズ」が発売されることになります。
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ランニングあと、足の甲の痛みと腫れ

ところが、裸足ランニングによって、疲労骨折をおこす人が増えています。機能が退化した足でいきなり前足部着地を行ったため、中足骨に大きな負荷をかけ、疲労骨折を引き起こすケースが問題になっています。

ランニングあと、足の甲の痛みと腫れが生じ、引かないというときは、中足骨疲労骨折であるかも知れません。中足骨は足の指の根本部分にある骨をいいます。疲労骨折が起こりやすいのは、内側から2番目と3番目です。

中足骨はふだん、蹴りだしのときに大きな力が加わる箇所で、筋疲労が生じると、筋肉が柔軟性を失います。第2・第3中足骨に負荷が集中することで、骨折が多くなります。

通常はレントゲン検査による診断ですが、発症直後はレントゲン上に異常を認めない場合があります。痛みや腫れが引かないときは、2~3週間後の再検査をおすすめします。そして、約4週間の安静を保ちましょう。自然治癒力による回復が基本です。手術を行なうことはまずありません。
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「トランジション」がなにより大事

裸足系シューズによるランニングの場合、急激に発達した前足部分の筋肉に骨の強度がついていけず、骨に異常な負荷をかけてしまうことで疲労骨折を発症したといえます。裸足系ランニングに移行して、数週間で多くみられます。

これは着地衝撃によるものではありません。推進力を生むために足指を持ち上げることで起こる負荷に中足骨が適応できなかったためと考えられています。中足骨が未熟な状態にあるため、少しの負荷でケガをしてしまうのです。

裸足系ランニングは、シューズのクッションに頼って走る従来のランニングとは使用する筋肉がだいぶ異なります。そのため「トランジション」と呼ばれる長めの移行期間が十分に必要です。

いきなり長い距離や時間を走らず、ゆっくり適応するのが大事です。骨は筋肉と同じで負荷をかけることで強くなりますが、その進み具合はゆっくりです。トランジションを省くと、疲労骨折のほか、ふくらはぎ・アキレス腱・足底筋膜の故障につながります。

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