かげ?

ひろ
ひろ (男性 / 50代)
22歳くらいの時に、梅毒と診断されました
その時は錠剤の抗生剤?を飲んでいましたが、長い間飲んでいても血液反応はずっと出ていました
結果、完治はしているものの、影のようなものだと言われました
症状と全然出ていないんですが、血液検査をすると未だに反応が出ます
この場合、感染?したり、結婚して子供を作った場合、子供に影響が出るでしょうか?
病院で聞いても、はっきり答えてもらえませんでした
なので、結婚も今まで考えられませんでした
専門家中の専門家とお聞きしたので、ご相談させていただきました
よろしくお願いします
尾上 泰彦
プライベートケアクリニック東京 新宿院
まず、私は専門家ではありません。でもこのご相談にはお答えできます。

現在、貴男は50歳の男性。22歳の時に梅毒に感染し、治療は、ある抗生剤を長期間服用された。
しかし梅毒の検査結果がいつも陽性になることで悩まれている。
約28年の長期間、心にキズができたまま不安が続いて、大変つらい思いをされてきた訳です。
貴男の場合、担当医師が完治したというのであれば、ご心配はないと考えます。
担当された医師が言う、血液検査成績の“影”とは、血液の中に残った治癒性瘢痕のことです。
一般に少し深い傷(潰瘍など)が生じると、治っても傷痕が残ります。このことを瘢痕性治癒ともいいます。
恐らく、このことを“影”と言われたものと考えます。火事に例えると、鎮火しても火事場の焼け跡は残ります。
この焼け跡はブルドーザーでかたずけられますが、血液の中の瘢痕(焼け跡)はかたずけられません。
ですから、血液検査をすると、この瘢痕が必ず陽性となって出てきます。
心にキズを付けてしまう嫌な検査ともいえます。こんな検査があるから悩まれるのですね。
貴男の場合は治療した訳ですですから、なにもご心配いりません。
貴男の梅毒の血液検査はRPR(STS)とTPHAをやられている思います。
おそらくSTSは陰性化しており、TPHAのみいつも陽性に出てしまうという状態が続いているものと考えます。
日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をしているのであれば、
投薬開始から1ケ月で梅毒の感染能力はなくなります。
それ以降は、一般的な日常生活はもちろん、キス、セックスも可能となります。
結婚もできますし、子供も作っても構いません。子供に影響はでません。
今まで症状がないのであれば、貴方が梅毒を移された原因は分かりませんが、
多くの場会、献血、集団検診、人間ドック、入院や術前などの血液検査で偶然発見される潜伏梅毒で、感染時期の特定は難しくなります。しかし梅毒は感染していることが分からず、放置していても約2年で感染力はなくなり、自然治癒するともいわれています。

専門的な知識になりますが、勉強いたしましょう。
梅毒の治療は日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をお勧めしております。
通常、サワシリン(アモキシリン製剤:合成ペニシリン製剤の一つ) 250mg×6錠 1日3回 4~8週間服用。感染時期が不明の場合は8~12週間服用していただきます。
最近、修正されたガイドラインでは梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐tR)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日120万単位/分3またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3を内服させます。
ペニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日100mg×2を内服させます。
ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日200mg×6を、内服投与します。
貴男の場合は今後、定期的検査は特に必要ありませんが、定期的に6カ月~1年毎に通院され血液検査で抗体価の推移をみることは良いことです。心の平安を得るためにも、お勧めいたします。
抗体価がさがってくると貴方も医師も安心されることでしょう。

さて、医師に言いたいことですが、一番大事なことは、梅毒の治療の目的は、
梅毒の病原微生物であるトレパネーマパリドムを死滅させることであって、
梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をなされば心配ありません。
貴男の担当医は大丈夫なのですが、我々、医師が注意すべきことは、
抗体価がさがらないからといって、患者にいつまでも必要のない薬を服用させてはいけないことです。

お大事になさってください。もし可能であれば、結婚なさってお子さまも作りましょう。