今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『ピロリ菌』をご紹介させて頂きます。

もしあなたが医師から、「検査の結果、胃潰瘍が見つかりました」と言われたら、原因はなんだろうと推測しますか。「あれだけのハードワークをこなしていたら、ストレスがたまったのだろう」とか、「家庭のごたごたが続いていたから心労だ」と考えないでしょうか。

しかしこれからは、胃潰瘍と胃がんが見つかったら、「原因はピロリ菌」と考えるようにしてください。もちろん、ストレスが胃に負担をかけることは間違いありません。ストレスは、胃の状態を悪くします。
しかし、胃がんや胃潰瘍の原因は、ストレスよりも、圧倒的にピロリ菌であることが、最近の研究で分かってきたのです。

ピロリ菌

ストレス説は覆った

胃がんはストレスが原因で発症する」という誤った「常識」が根付いているのは、仕方がないことかもしれません。というのは、ピロリ菌こと、ヘリコバクター・ピロリが発見されたのは、1983年のことなのです。いまは2016年なので、33年前のできごとです。

33年という月日は、長いように感じるかもしれませんが、治療の進歩という観点からすると「ごく短期間」です。しかも、それまで大多数の医師が「胃がんの原因はストレス」と信じていたので、それを覆すには、並大抵の研究量では足りません。

さらに「ピロリ菌なんかが、胃がんを引き起こすわけがない」という根拠も存在していたのです。というのは、胃の中は強い酸性の状態だからです。多くの生物は、酸性の環境では生きていけません。それで「仮にピロリ菌が胃の中に生息しているとしても、がんを作るまでずっと胃の中に居続けることはできない」と考えられていたのです。

しかし事実は違いました。ピロリ菌は胃の中で元気に生活し、せっせと、がんを作り続けていたのです。そして、「胃がんの原因は、ストレスよりもピロリ菌」ということが、消化器の治療分野で定着したのです。衝撃的な数字を紹介します。

胃がんの99%は、ピロリ菌の感染が基本にあるのです。

ピロリ菌

除菌の前にやること

ということは、胃がんの原因を取り除くことは、ピロリ菌を胃の中から追い出すことに他なりません。
朗報があります。2013年に、ピロリ菌の除菌がしやすくなりました。それまでは、胃がんや胃潰瘍といった、胃の病気の中でも比較的重い病気の疑いがないと、医療保険が使えませんでした。しかしその年に、「胃炎の疑い」があるだけで、除菌の治療が、医療保険を使って受けられるようになったのです。

除菌の前に、ピロリ菌がいるのかどうか検査します。「採血」や「尿検査」、さらに、ある薬を飲んだ後に息をしてもらい「その息を検査」してピロリ菌の有無が分かることがあります。
この3つの検査で引っかかれば、「ピロリ菌はいる」と判断できますが、しかし、この検査でピロリ菌が見つからなくても、「ピロリ菌がいない」とは断言できないのです。
そこで次に、便を採取して調べたり、内視鏡で胃の中を直接見る検査が行われます。

ピロリ菌

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌がいることが分かると、ようやく除菌に入ります。3種類の薬を飲みます。

①プロトンポンプ阻害薬
②アモキシシリン
③クラリスロマイシン
といいます。

①は胃酸の分泌を抑える作用があります。②と③は、抗菌作用があります。これを1週間飲むだけで除菌が終了です。

ただ、全員が1週間で除菌できるわけではありません。その場合、さらに1週間行い、それでだめでも、さらにもう1週間行います。最大、3週間までこの除菌治療を受けることができるのです。
最初の1週間で除菌が完了するのは70%と言われています。

先ほどは朗報をお伝えしましたが、こんどは嬉しくないことをお知らせします。
それは、3つの薬のうち③クラリスロマイシンの効果が出ない患者が増えているのです。このクラリスロマイシンは、ピロリ菌以外の菌の除去にも効果があるので、例えば風邪を引いたときも処方されることがあります。
その結果、ピロリ菌がクラリスロマイシンの耐性をもってしまうのです。「耐性をもつ」とは、ピロリ菌がクラリスロマイシンより強くなってしまうということです。それで、3つの薬を3週間にわたって飲み続けても、ピロリ菌の除菌が失敗することがあるのです。

しかし、さらに新薬が開発され、ピロリ菌退治は、日々進化しているといえます。

ピロリ菌

胃がんで死ぬのはもったいない!

現代は、がんで死ぬのはもったいない時代です。特に胃がんは、ピロリ菌という確たる原因が判明し、その除菌方法も、ほぼ確定しています。それでも胃がんを発症してしまっても、初期の小さな胃がんであれば、内視鏡で切り取って治療終了ということも珍しくありません。内視鏡で切り取ったら、抗がん剤を飲まなくてもいいのです。

しかし、内視鏡で切り取れないくらいに、胃がんが大きくなれば、手術→抗がん剤→それでも転移→死亡――となりかねません。この記事を読んでいただいた方が、「それはもったいない」と感じていただけたら、とても嬉しいです。

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