今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『リンゴ病』をご紹介させて頂きます。

いかなる病気も恐いものだが、「本当に恐いと思える病気」と「すぐには恐いと思えない病気」があるように思える。前者は、がんだ。がんは、保健行政やマスコミの呼びかけや、病院や医師による警鐘で、日本国民が「本当に恐い」と感じている。
しかし、痛みがまったくない「高血圧」や「糖尿病」は、その病気にかかっている患者ですら、「恐くない」と感じてしまう人がいる。こんなに恐い病気はないのに、である。

りんご病

リンゴ病流行について

昨年(2015年)夏、リンゴ病が大流行した。東京都健康安全研究センターの発表では、ピーク時には、感染者の数が過去5年平均の3倍に達した。2016年1月現在は、昨年ほどではないが、平均より悪い状況で推移している。

リンゴ病も、本当は恐い病気なのに、すぐには恐いと思えない病気だ。
すぐに恐いと思えない理由は、
①子供の発病が多いので、大人は油断する
②発症時は苦しいが、1週間ぐらいでほとんど治るので、簡単に乗り越えられそうな気がする
③1度感染すると、2度と感染しないので、安心してしまう
からである。

しかし、妊婦が感染すると、胎児が流産または死産する可能性が高い、とても恐い病気なのだ。厚生労働省の調査で、妊婦がリンゴ病に感染し、さらにお腹の中の子供にも感染した69人を調べたところ、49人が流産または死産していたのだ。その率は71%にも上る。
2015年7月16日付の毎日新聞は「続くリンゴ病流行、妊婦は要注意」という長文の記事で注意喚起していた。

こんな残酷なケースもあるという。お腹の子の兄や妹が、幼稚園や小学校でリンゴ病に感染し、それが妊婦にうつり、胎児にうつった、というのだ。69人の妊婦のうち、34人は、お腹の子の兄や姉もリンゴ病にかかっていた。
お兄ちゃんやお姉ちゃんの病気が、母親を介して、弟君または妹ちゃんを苦しめてしまったということである。

こうしたことが起きないよう、妊婦やその家族は、リンゴ病に十分警戒していただきたい。

りんご病

リンゴ病~症状と診断~

リンゴ病の正式名は「伝染性紅斑(でんせんせい・こうはん)」という。両頬に赤い発疹ができることから、「リンゴ」という俗称が付けられた。その後、全身にも発疹が現れる。発疹は1週間ほどで消える。
原因は、パルボウイルスB19というウイルスに感染すること。感染者のくしゃみなどを浴びると感染する。
子供のころにかかると、免疫が得られるので、のちにパルボウイルスB19に接触しても、発症しない。ただ、大人になって初めてかかると、まれに、関節痛や頭痛、歩行困難といった重い症状に襲われる。ただ、このように重症化することは、ほとんどない。

リンゴ病は、初期の発見が難しい。というのは、両頬の赤い発疹という、リンゴ病特有の症状が出る1週間ほど前に、微熱が出るからだ。このとき、せき、鼻水、鼻づまりも起きることがある。風邪の症状とそっくりなのだ。
リンゴ病は、大人は関係ない」と考える人が多く、しかも、そう考える医師も少なくないので、その微熱は、まず「風邪」と考えられてしまう。微熱の段階でリンゴ病と診断することは、事実上困難といわれている。

りんご病

妊婦がリンゴ病に感染すると・・

妊婦がリンゴ病に感染すると、ウイルスが胎盤を通ってお腹の子に感染してしまう。お腹の子に感染すると、赤血球が減少して、貧血が進み、むくみを生じる。これを「胎児水腫」という。
放置すると心不全に陥り、死産してしまう。ただ、お腹の中の赤ちゃんに直接輸血することで治る場合もある。なので、リンゴ病に感染したときに、妊婦本人だけでなく、家族全員が、「確かにリンゴ病に感染した」と確定する必要がある。妊婦本人、または、家族のリンゴ病が確定すれば、医師がお腹の子の様子を超音波で確認したり、輸血といった処置を取ることもできる。

リンゴ病の診断は、血液検査が必要になる。ただ、通常の血液検査では調べないIgM抗体を調べる。通常の血液検査では感染の有無が分からない。「リンゴ病かどうか知りたい」ときに行うことになる。つまり、血液検査によって、初期発見できるわけではないのだ。

リンゴ病を初期で見付けることは困難だが、リンゴ病が流行すれば、保健所が警報し、マスコミでも報じられる。リンゴ病は、4年から6年おきに流行することも知られている。妊婦やそのパートナーは、情報を集め、自己防衛をする必要があるといえる。