トンズランス感染症 トンズランズカンセンショウ

初診に適した診療科目

トンズランス感染症はどんな病気?

トンズランス感染症とは、水虫の原因にもなる白癬菌の仲間で、トリコフィトン・トンズランスと呼ばれる真菌による感染症です。
一般的な水虫菌とは異なり足には感染しにくく、頭、顔、首、上半身などの部位に発症することが多いです。
外国から持ち込まれた比較的新しい真菌症であり、普段の生活で感染するリスクはほとんどありません。特に柔道やレスリングなど密着度の高いスポーツの競技者の間で感染が多い傾向があります。

感染するとかゆみや発疹などの症状が現れます。症状は半年ほどで治まった後も、角質層などに菌が潜んでいて、感染源となる可能性があります。
一度感染すると治りにくいという点も特徴のひとつです。特に症状が重い場合は、頭部が膿んで腫れ上がり、頭髪の一部が失われることもあります。

適切な治療が行われれば、大半は完治します。湿疹と間違えて、炎症を抑えるステロイド剤などを使用すると症状を悪化させる場合もあるので注意が必要です。

主な症状

トンズランス感染症には、体部⽩癬と呼ばれる体に⾚い斑点をつくるものと、頭部⽩癬と呼ばれる髪の⽑が抜けて円形脱⽑をつくる2種類があります。
体部⽩癬の症状としては顔、⾸、胸、腕、すねなどにやや乾燥した⾚い斑点が現れます。斑点の部分にはかゆみを生じることが多いです。
かゆみや目で見える部分に斑点が現れることで気が付くことがほとんどです。

頭部⽩癬の場合は⾚い斑点に加えて円形脱⽑、ふけなども症状として現れます。かゆみなどの自覚症状がないことも多く、症状が進行するまで気が付かないケースも多いです。頭部⽩癬では脱毛した部分や毛髪がまばらになった毛穴の部分が少し盛り上がって黒く広がり黒色の点に見えるといった症状も特徴的です。これらの症状が進行すると、毛髪が抜け落ちるケルスス禿瘡の状態につながる可能性もあります。

トリコフィトン・トンズランスは毛穴の中に入り込んで人と共生する性質があるため目立った症状がなくても菌に感染しているケースもあります。

主な原因

トンズランス感染症はトリコフィトン・トンズランスと呼ばれる真菌を原因として感染する感染症の一種です。
比較的新しい水虫菌として認知されており、スポーツを通じて外国から持ち込まれたものと考えられています。
感染力が高く他の水虫菌と比較して角質層への進入速度が早いという特徴があります。

柔道、相撲、レスリングに代表されるような接触機会の多いスポーツをする中学生・高校生・大学生の間や家族・友人間でもよく感染が見られます。
集団の中に感染者が一人でもいる場合、集団全員の早期検査と早期治療を行うことが重要です。
例えば練習や試合の後にはすぐに入浴やシャワーを行い体や頭を石鹸で洗浄したり、設備が無い場合には濡れタオルで体を清潔を保つよう意識することが大切です。衣類をこまめに洗濯し、帽子やタオルなどの貸し借りをしないようにすることも予防のために必要です。欧米諸国のように感染が蔓延するのを防ぐ意味でもこれらの予防に力を入れる必要があります。

主な検査と診断

トンズランス感染症の診断は主にヘアブラシ法による検査によって行われます。
シャンプーの際に使用する、柔らかい突起のある丸形ヘアブラシなどを使用し、頭皮をさまざまな方向に軽くこすります。
これによって採取したサンプルを培養し、トリコフィトン・トンズランスの有無を確認する方法です。

見た目に症状が出ない場合があるため自覚症状がまったくないケースも少なくありません。そのため診断では所見が確認できず、培養検査を行って初めて感染が発覚することも多いです。
全く症状を認めない保菌者を無症候キャリアと呼びます。これらのことからトンズランス感染症の診断は非常に難しいものとされています。
問診で格闘技を行っているかを確認することも重要です。さらに丁寧な診察と培養検査を行ってはじめて発見に至ります。

まったく症状がなく保菌している場合、知らず知らずのうちに感染を広げてしまう可能性があります。疑いがある場合は早期に検査を行い、早期に治療を開始することが大切です。

主な治療方法

トンズランス感染症の治療は抗真菌剤の塗り薬や内服薬を用いる薬物療法が一般的です。
特に軽症の体部⽩癬の場合は塗り薬を用いることもあります。
1週間程度で症状が改善する場合がありますが、再発を防ぐためにも継続して1か月程度塗り続ける必要があります。また塗り薬のみでは菌陰性化が困難であることも多いです。

頭部⽩癬や体部⽩癬が多数できているなど症状が重い場合には飲み薬が選択されます。特に毛髪内まで感染している状態では、飲み薬が第一選択となります。

対策として、トレーニング後には抗真菌剤の入ったシャンプーや泡石鹸で洗浄することで予防効果が期待できます。
薬局等でも一般に販売されており、1日におきに約3ヵ月程度使用すれば予防はもちろん、菌の量が少ない場合は改善がみられることもあります。

基本的に何らかの自覚症状がある場合には早期に医療機関を受診すること、一人でも感染が確認されたら集団全員が検査を行うことが大切です。