レンサ球菌感染症 レンサキュウキンカンセンショウ

初診に適した診療科目

レンサ球菌感染症はどんな病気?

レンサ球菌感染症は、レンサ球菌属 Streptococcusの細菌によって引き起こされる感染症です。
レンサ球菌属の細菌は、グラム陽性好気性細菌でヒト感染症の原因としては最も多い細菌のひとつです。飛まつ感染や接触感染などで感染します。
温帯地域に多く、温帯地域に多く、亜熱帯地方でもわずかに見られますが、熱帯地方ではほとんど見られません。
日本では冬季、春から初期にピークが認められます。これらのことからレンサ球菌属の細菌は熱に弱いことがわかります。感染した臓器によって症状が異なり、咽頭炎,肺炎,敗血症,皮膚感染症,心内膜炎など様々です。
レンサ球菌感染症が引き金となって起こる疾患に、リウマチ熱と糸球体腎炎、マクロライド耐性株があります。ほとんどの場合、ペニシリンで治療可能です。まれにレンサ球菌毒素性ショック症候群が起きる場合もあります。軽度の外傷から起きる可能性があり、注意が必要です。レンサ球菌毒素性ショック症候群が原因で急性低酸素血症性呼吸不全に移行する可能性もあります。

主な症状

症状は感染した部位によって異なります。咽頭、中耳、副鼻腔、皮膚、皮下組織、肺、心臓弁、血流など、感染する部位はさまざまです。
皮膚に感染した場合は蜂窩織炎(ほうかしきえん)と呼ばれ感染した皮膚が赤くなり、皮下組織が腫れ痛みを感じます。筋肉を覆う結合組織である筋膜が感染すると壊死性筋膜炎になります。急に悪寒を感じ、発熱と痛みが強く出ます。感染があるから皮膚に異常が見られるとは限りません。
正常に見えても感染している場合もあります。咽頭に感染するとレンサ球菌咽頭炎になります。5〜15歳に起こりやすい疾患です。3歳以下ではほとんど起こりません。
症状は突然喉の痛みから始まり、悪寒、発熱、頭痛、嘔吐、けん怠感などが見られます。のどは真っ赤に晴れ上がり、膿が出ている場合もあります。首のリンパ節に腫れが見られ、軽く押すと痛みがあります。
3歳以下の場合は感染しても鼻水が出る程度と軽症です。咳をしたり下痢がある場合は、レンサ球菌ではなく、ウイルス性の疾患と考えられます。

主な原因

レンサ球菌感染症の原因はレンサ球菌属 Streptococcusの細菌です。
感染経路は、感染している人が咳やくしゃみをしたときに、口から飛び出るしぶきに含まれた細菌を吸い込むことによって感染する「飛まつ感染」。
または、咳やくしゃみをしたときに口に当てた手であちらこちらを触り、それを触った人が手に細菌を付着し、口や鼻に触れることで感染する「接触感染」が主な感染経路です。その他、感染がある傷や患者の褥瘡(床ずれ)によって感染者の世話をする人に感染する場合や、母体が感染者の場合は経腟分娩によって新生児に感染する場合があります。ヒトとヒトとの接触で伝播するため、家庭や学校など接触の多い集団生活で起こりやすいです。特に兄弟間での感染が多く、25%だという報告があります。温帯地方に多く、熱帯地方ではまれにしか見られません。
日本では冬から春、初夏までの間がピークです。保菌していても健康に影響がない保菌者もいますが、健康な保菌者からの感染はほとんど見られないようです。

主な検査と診断

最近レンサ球菌感染症が増加の傾向があると言われますが、実際は迅速な検査方法の発達により簡単に診断できるようになったためです。
「迅速検査」と呼ばれる診断用検査は、数分で結果が出ます。この迅速検査で結果が出ない場合もあります。その場合は咽頭への感染はのどから採取したサンプルの培養検査でわかります。発熱し、首のリンパ腺を触ると腫れがあり軽く押すと強い痛みを感じること、また喉が腫れていても咳をしないことなどで決定します。
咳をしないことがウイルス性の咽頭炎とは異なることです。
皮膚に感染した場合の蜂窩織炎と膿痂疹(のうかしん)は医師が判断します。筋膜に感染した場合の壊死性筋膜炎はCT検査などの画像検査や培養検査、または試験切開をする場合もあります。血清学的な検査をする場合もあります。抗streptolysin‐O 抗体(ASO)、抗streptokinase 抗体(ASK)の抗体上昇を見る方法です。その他、光学的免疫測定法による検査も短時間で結果がわかりますが、陰性という結果になった場合、培養検査で確認が必要です。

主な治療方法

治療に用いられる薬は、ペニシリン系、セファロスポリン系の抗生物質がまず第一に選ばれます。3〜4日で回復し始めますが、10日間以上服用することが必要です。
その他の方法としては、長時間作用型のペニシリン(ベンジルペニシリンベンザチン)の単回注射でも効果が上がります。
リウマチ熱や急性糸球体腎炎など二次合併症を防ぐためでもあります。効果が見られない場合は、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸を使用する場合もあります。
もちろん抗菌剤を使用しなくても安静にしていれば自然に治癒する場合も多いです。
しかし抗菌剤を使用する目的は、前述したように二次合併症が起きないためという他に他の人への感染を防止することです。
抗菌剤は小児には効果的ですが、成人の場合はすぐに効果が上がるわけではありません。発熱や頭痛、のどの痛みには、痛みと発熱を軽減するアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)なども併用します。壊死性筋膜炎になった場合は集中治療室(ICU)に入って治療をしなくてはいけない場合も多いです。