肺炎球菌感染症 ハイエンキュウキンカンセンショウ

初診に適した診療科目

肺炎球菌感染症はどんな病気?

肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌が感染することによって起こる疾患です。その名前の通り、肺炎の原因になることが多い細菌ですが、肺炎以外に髄膜炎・中耳炎・副鼻腔炎・敗血症などの原因になります。
肺炎球菌はその形態から「肺炎双球菌」とも呼ばれる細菌です。健康な人の鼻やのど、気道などに存在する常在菌の一種で、人の体になんの影響も与えないまま消滅してしまうことが多いです。しかし、ガンの治療中などで免疫力のない人や高齢の人、免疫機能の未発達な幼児などでは重篤な肺炎球菌感染症を引き起こす場合があります。
その他、コルチコステロイドや化学療法薬などの免疫系を抑制する薬を服用している人や脾臓がない人、アルコール依存症の人も注意が必要です。また脳や脊髄を守っている髄膜に感染すると髄膜炎になってしまう可能性もあるため重篤化する可能性があります。抗菌薬の無かった時代は致命率の高い病気になる原因菌として恐れられていました。

主な症状

この菌は特に冬から初春にかけて人の気道上部にすみつきます。菌の存在にもかかわらず、病気を起こす頻度はさほど高くありません。
肺炎球菌が起こす重い病気の中で最も多いのが、肺組織の感染症である肺炎です。症状は突然始まり、胸に鋭い痛みが起こり、ふるえるほどの悪寒がします。
発症前から、ウイルスによる上気道感染の症状(のどの痛み、鼻づまり、鼻水、空せき)がみられることもあります。熱が上がり、せきが出て、赤茶色のたんも出ます。
全身にけん怠感があり、息切れもよく起こります。肺炎球菌による髄膜炎の場合は、熱、頭痛、全身のけん怠感などが現れます。首がこわばり、動かすと痛みますが、早いうちはこの症状が出ない場合もあります。髄膜炎が疑われる場合は、ただちに脊椎穿刺(せきついせんし)(脳、脊髄、神経の病気の診断: 脊椎穿刺を参照)を行って、脳脊髄液の中に白血球や細菌など感染症の徴候を示すものがないか調べます。 肺炎球菌による中耳炎は小児によくみられ、耳が痛み、鼓膜が赤く腫れます。通常は菌の培養などの検査は行いません。小児用の肺炎球菌ワクチン接種のおかげで、症状が重くなることが大変少なくなっています。

主な原因

肺炎球菌感染症の原因は肺炎球菌です。肺炎球菌は90種類以上存在しますが、深刻な症状を伴う感染症の原因となる菌は、そのうちの数種類です。
肺炎球菌は、基本的には健康な人の上気道に冬から春先に常住しています。菌を保持していてる自然宿主にほとんど症状が見られない場合も多いのですが、症状がなくても細菌は人から人への感染します。
感染経路は、くしゃみやせきによって飛び散る唾液などが空中に飛散し、それを吸い込んだり、感染者と濃厚な接触をすることなどです。人が集中する場所で、人と人の距離が近い接触が起こりやすいアクティビティーをしている場所では特に感染しやすい傾向にあります。
例えば、介護施設、デイケア施設、軍の拠点、刑務所、ホームレスのシェルターなどです。特に小さい子供や高齢者、ガンの治療を行なっている人、インフルエンザにかかったばかりの人など免疫が弱っていると感染し、重篤な状態になりやすいため注意が必要です。

主な検査と診断

深く息を吸うと胸が著しく痛い場合は肺炎の検査を行います。肺炎の検査は、胸部エックス線検査をして、胸部に影があるかどうかを確認します。
肺炎にかかっていると影が見えることですぐにわかりますが、それだけではどの細菌に感染しているかわかりません。肺炎が肺炎球菌に感染しているかどうかを知るためには、たん、または血液を採取して検出します。尿中に肺炎球菌に対する抗原ができているかどうかを調べる検査をする場合もあります。首が硬くなっており意識が朦朧としている場合は、肺炎球菌による髄膜炎が疑われます。その場合は背中から注射針を使って髄液を採取し、腰椎穿刺(ようついせんし)の検査を行います。採取した髄液を分析し炎症があるかどうか、また細菌感染があるかどうかを調べます。髄膜炎の場合はすぐに治療をすることがとても大事です。
小児の場合は中耳炎になる可能性が高いです。小児の中耳炎の原因は、肺炎球菌による感染が半分以上を占めます。その場合は、培養検査などはせず症状と身体診察結果によって診断します。

主な治療方法

肺炎球菌感染症には感染した部位により肺炎や髄膜炎などさまざまな疾患があります。感染した部位によって治療法は異なりますが、基本的に抗菌薬で細菌を抑える治療が行われます。
肺炎球菌の場合は、ペニシリン系の薬やペニシリンに似たアンピシリンやアモキシシリンなどを利用することがほとんどです。一般的には内服薬として利用しますが、重篤な症状が見られる場合は静脈内投与を行う場合もあります。
近年、ペニシリン系のこのような抗菌薬に耐性のある肺炎球菌が増えてきました。その場合は、ペニシリンの代わりにセフトリアキソンやセフォタキシム、フルオロキノロン系(レボフロキサシンなど)やバンコマイシンといったその他の抗菌剤を利用することもあります。治療初期からある程度の量の抗菌薬を投与し、細菌が他の部位に広がらないように注意する必要があります。髄膜炎に疾患してしまった場合、バンコマイシンは効果的ではない場合があります。そのため、セフォタキシム、リファンピシンなど複数の抗菌剤を投与します。