脳脊髄液減少症

初診に適した診療科目

脳脊髄液減少症はどんな病気?

脳脊髄液減少症とは脳脊髄液腔から脳脊髄液(髄液)が持続的ないし断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠などさまざまな症状を呈する疾患です。
低髄液圧症候群とも言われます。多くは頭痛を主症状としており、頭痛以外の症状のみで発症するケースはまれです。

脳、脊髄とくも膜の間はくも膜下腔と呼ばれる髄液で満たされた空間があります。
髄液は一定の量が保たれるよう調整されていますが、髄液の量が何らかの原因で減少すると髄液の流れが変化し、脳が動き、起立時には下方へ牽引されます。これにより脳が通常あるべき位置より落ち込むことで頭痛などを発症します。特に起立した状態で頭痛が起きるケースが多いです。

脳脊髄液減少症は不明な点もまだ多く、確実に診断する方法は確立されていません。原因も明らかになっていない点が多いですが、交通事故によるむち打ちや後遺症、スポーツ外傷、出産なども脳脊髄液減少症の原因となりうるとされています。

主な症状

脳脊髄液減少症の主な症状は頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠・易疲労感です。これらの症状は座位、起立位により3時間以内に悪化することが多いです。
まず引っ張られるような強い頭痛が現れ、起立している状態で症状が強く現れ横になれば楽になる起立性頭痛となります。
この起立性頭痛が脳脊髄液減少症の典型的な症状と言えます。

髄膜・血管が牽引されることでほぼすべてのケースで頭痛の症状が現れます。次に多い症状は髄膜の刺激による悪心や嘔吐で、3~4割程です。複視や聴力障害は外転神経や聴神経の伸展により引き起こされる症状で、それぞれ2~3割程度の割合で現れます。めまいのみ、耳鳴りのみなど頭痛以外の症状が単体で現れることはほぼありません。

脳脊髄液減少症の症状は慢性的に持続することも珍しくなく、その場合精神的な苦痛も大きいのが特徴です。またまれではありますが硬膜下血腫を合併するケースもあり、命に係わることもある疾患です。

主な原因

脳脊髄液減少症は髄液が漏れ出ることで発症しますが、その原因自体は特定できないことも多くあり明らかにされていない点も多いです。
交通事故やスポーツによる外傷、手術など外傷性の脳脊髄液漏出や、尻もち程度の些細な外傷による特発性の脳脊髄液漏出が原因として挙げられます。中でも交通事故によるむち打ちの後遺症とは関連性が深いとされています。
しかしむちうち損傷後の症状は多彩で、症状が様々な要因で悪化することも少なくありません。
あくまでも脳脊髄液減少症はむち打ちの合併症の一部であり、全てが脳脊髄液減少症に起因するわけではありません。

その他にも体内水分の減少や、手術を行った際に腰の骨に当たる腰椎から針を指して麻酔を注入する腰椎穿刺によって髄液が漏れ出るきっかけとなるケース、出産なども原因となることがあります。慢性疲労や起立性障害による小児の不登校との関連も指摘されており、近年ではまれな疾患とは言えなくなってきました。

主な検査と診断

脳脊髄液減少症の検査には問診、脳・脊髄MRI、放射性同位元素(RI)脳槽シンチグラフィーなどを必要に応じて行います。
問診も診断のためには非常に重要で、起立性の頭痛や体位による症状の変化などは典型的なものと言えます。
脳脊髄液減少症の特徴として多彩な症状が現れるため、それらを把握することは診断の助けとなります。

脳や脊髄のMRIでは脊髄液の減少によって形態学的にどのような変化があったのかを確認することができます。
髄液が漏出している像を確認するために行われるのが放射性同位元素(RI)脳槽シンチグラフィーです。腰部から硬膜内に細い針を刺してRIを髄液腔に注入する検査で、硬膜漏出の原因となる部位を調べたり、髄液の量が低下していることも同時に確認できます。また、髄腔内に造影剤を注入して、全身CTを撮影し、造影剤が硬膜外へ漏れていないかを併せて確認することもあります。しかし画像診断で髄液が漏れている部位を特定できるケースはまれです。

主な治療方法

脳脊髄液減少症の治療は、時期により治療方法を選択します。
発症1ヶ月以内の急性期と呼ばれる時期なら2週間ほどの臥症安静と充分な水分補給(口から摂取できないなら点滴で)でかなりの患者さんの症状が改善します。
発症1ヶ月以降であったり、急性期の治療で改善が見られない場合は硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)という治療法で、実際に髄液の漏れを止める方法が検討さてます。

ブラッドパッチは患者さん本人の血液を硬膜の外側に注入することで硬膜の漏出部位を塞ぐ方法です。硬膜の外側に入れた穿刺針から血液を注入し、血液が固まることで糊の役割を果たし漏出している部位を塞ぐことができます。
さまざまな病態に対して治療の効果が認められている治療法で、脳脊髄液減少症の治療法として最も一般的です。再発するケースも少なくないため、複数回処置を行う場合もあります。自分の血液を使用するため、合併症や危険性の少ない点はメリットと言えるでしょう。