依存性人格障害 イゾンセイジンカクショウガイ

初診に適した診療科目

依存性人格障害はどんな病気?

依存性人格障害とは、世話をされたいという過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動を取り、分離に対する恐怖を感じる精神的障害の一種です。
依存性パーソナリティ障害とも呼ばれ、物事のとらえ方や感情の表し方に偏りがある点も特徴で周囲の人と異なる反応や行動をとる傾向があります。
他人に過度に頼り、他者に従い、依存するのが特徴ですが、うつやアルコールなどへの依存症も同時に発症している患者も多いです。
依存性人格障害は人口の約0.7%の人に発症がみられるとされています。

発症の原因は明らかになっておらず、環境や幼児期の経験、性格的な問題などが複雑に関わりあって発症に至ると考えられています。
多くの場合、10代か成人期の早期に始まり、さまざまの状況で明らかになります。
問診などから確認できる症状から、診断基準に基づいて、医師によって診断がくだされます。基本的に精神科、心療内科で診断が行われます。
精神療法と薬物療法による治療の選択肢があります。

主な症状

依存性人格障害を発症すると、人に頼り依存しようとする症状がさまざまな場面で現れます。
交友関係が狭いという点も特徴です。

ささいな決定をするにも他の人からの助言や保証がなければ決定ができない状態になり、自分の生活のほとんどの場面で、他人に責任を取ってもらおうとする傾向があります。
また指示や是認が得られなくなることを恐れ、他人の意見に反対できなくなります。
自分で計画を立てたり、自主的に物事を行なうことができなくなりますが、これは動機や気力が欠如しているためではなく判断や能力に自信が持てないためです。
他人から愛情や支持を得るために、不快なことを自分からやるようになったり、自分の世話ができないという恐怖から、一人になると落ち着かない、無力感を感じるなども症状の一つです。
親密な関係が途切れた際、自分を世話してくれる別の関係を求めます。
放って置かれるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている点も特徴です。

主な原因

依存性人格障害を発症する原因は、現在のところ明らかになっていませんが、環境や性格など本人を取り巻くさまざまな要因が関連していると考えられています。
例としては養育期につらい経験をしたり、環境が整っていなかったこと、自分自身を否定されるような経験、体の虚弱な体質など、育ってきた環境が発症と何らかの関わりを持っているとされています。
性格的な要因としては控え目、自信が持てない、服従しやすいなどの特徴が挙げられます。
また性格的な要因には家族内で受け継がれる特性と、本人の先天的傾向などがあるとされています。
このような環境的な要素と性格的な要素が組み合わさって発症するという説があります。

男性よりも女性に発症が多い傾向があり、その多くは思春期や成人期の早期などに発症しています。
また他の疾患も同時に発症している場合が多く、うつ病、気分変調症、不安症、アルコール使用障害、境界性や演技性などのパーソナリティ障害が例として挙げられます。

主な検査と診断

依存性人格障害の診断は、具体的な検査方法はなく、医師が米国精神医学会が発行する診断基準などを用いて行われます。
この基準には具体的な行動や考え方が項目に示されており、世話をしてもらいたいという持続的で過剰な要求が診断の重点となっています。
また思春期や成人期の早期に発症する傾向があるため、それ以降に依存性人格障害が疑われる症状が現れた場合には、その他の疾患の可能性があります。
本人に自覚症状がなく、家族など周囲の人が異変を感じて受診を勧めるケースも多いです。
無理に受診をすすめることはあまり有効ではなく、患者が自分と向き合える環境を整えることが大切です。

また診断にあたっては、薬物やストレスなど一過性の状態や、ほかのパーソナリティ障害との鑑別も重要です。
対人依存という面で類似している境界性パーソナリティ障害、他人からの関心を強く求める演技性パーソナリティ障害、愛着のある人物から離れることに過度な不安を感じる分離不安障害などが、特に依存性人格障害と類似している疾患として挙げられます。

主な治療方法

依存性人格障害はカウンセリングや薬物療法など、医師に相談して適切な療法をうけながら、改善していくことが有効とされています。
これはその他のパーソナリティ障害に対する治療とも共通しています。
精神力動的精神療法においては、現在の思考、感情、行動における無意識のパターンを認識することを重視します。
また認知行動療法は、異常な行動は誤った学習から生じるものという考えのもと不適応行動の習慣を消すことを目的に行われます。
これらの精神療法は依存性人格障害においても頻繁に行われています。
依存性人格障害の患者は医師や看護師に従いやすい傾向があり、精神療法による治療が期待できるケースも多いとされています。
医師や看護師への依存を起こさないように注意も必要です。

薬剤の有効性についてh現段階で確認できておりませんが、抑うつと不安の治療を目的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬が対症療法として用いられる場合があります。